ブルースの椎茸

お日様とPickingしたての椎茸

Kg単位の椎茸

それまでどれくらい椎茸を買って食べていたかというと、年に2回、ひな祭りのちらし寿司と元旦のお雑煮のために買う程度。ほんの小さなパックに、5つとか6つとか入ったものを買い、それすらも「こんなに食べられるかなー」なんて思っていたのです。嫌いかといえば嫌いではない。でも、大好きだと思ったことは一度もないし、この先思うこともないはずだった、椎茸。

2021年3月現在、我が家は今年すでに6kg弱ほどの椎茸を消費していて、これはちょっとした、「一般的な程度に椎茸を好きな人」が一生の間に食べる量にあたるんじゃなかろうか。

山盛り椎茸

We LOVE!!  Bruce&ツマ様

なんだこの消費量の変化は、といえば、ポケットマルシェで出会った生産者Bruceと奥様(ツマ様)が変貌の要因。Bruceは、きのこ全般の「形や色が最高にcoolなところ」を愛している。なかでも一番美味しいきのこはと聞けば椎茸だと答える。人の身体によいもの、きのこ、なかでも椎茸を作りたいと、遠くカナダから人生を謳歌しに日本にやってきて来た、“YOU”。

なにしろ我が家は全員、そんなBruceとツマ様と、その2人の創る農園が好きで好きでたまらない。

都内の自宅からもう2度ほども、岡山県美作市のブルースファームにお邪魔して、たぶん本当に邪魔にしかなっていないけれども歓迎してもらい、教えなくてよければ倍の速度で進むかもしれないものを教えてもらい、いっちょ前にくたびれて一緒に温泉に入り、「ふぁーーー気持ちいい!」とやっている。

見る側のためを思って普段見せることのない、素っ裸よりも恥ずかしいノーメイクを晒し、要領の悪さに加えて日常の運動不足ゆえに全身の筋肉痛に見舞われながら、大満足で帰宅するというのが、我が家の「Bruceの旅」基本パッケージ(都度軽微な変更はあり)。

岡山観光などは致しませんで、ひとときでも長く、Bruceご夫妻と一緒にいたい。

Bruceとツマ様の引力

金髪碧眼に高身長、一体構造は大丈夫なのかと思うほどに長い手足、少年のように輝く目。存在だけでBruceは目立つし、アイコンとして成立する存在だと思う。けどわたしたちが彼を慕うのは、そういったキャッチーなBruce像によるところではなくて、その朗らかでおおらかな人となりと、夢中で好きなことをしている姿ゆえ。

初めてBruceのところにお邪魔した帰り道、いつもならワイワイその旅を振り返るわたしたち家族が、息子は興奮したおして遊びきり爆睡、夫とわたしは珍しく無口だった。どうにも示唆多き旅で、考え込んでしまったことがその無口の理由。

資材がないので、取り壊す予定のお好み焼き屋さんの柱をもらってきて再利用し、ハウスを自作する。農園に寝泊りするときのために建てた山小屋の窓にはガラスが入っておらず、ビニールで覆ってある(最近はガラスが入って2人ともウキウキしてた)。

太陽光発電のパネルをつけた自作の小屋からの電力で自作ポンプを稼動させ、貯水した雨水をくみ上げて使う。小屋の裏に空き缶の入った70ℓのゴミ袋がたくさん積み上げられていたのを、一体これは何かと聞いたら、これをいつか溶かして…なんてBruce節が始まって、嘘でしょ溶接しようとしてるの?!なんてことも。

つまりブルースファームは「とても大変そう」なのだけど、カールした長いまつげの目元をキラキラさせたBruceは、「大変だったこと」「今大変だと思っていること」についてではなく、常に一体この先どうして行きたいのかの希望と輝かしい未来についてを話す。

ツマ様は「もー、大変なのよー」なんて言いつつ(いえ、本当の本当に大変なのだろうけれど)、いつもBruceと一緒にニコニコしていて、時折微量の、笑える程度の毒を吐く。できない理由ではなくて、叶えるための方法論をいつでもワクワクの中から掬いあげる。

大変よと笑って言いながらそれを選んで楽しんで、好きなことに丁寧に取り組むからこそファンがつく。だから彼らが本当に大変なときには、火の中も水の中もどんとこい、というコアなファンが大勢いるし、彼らはそのファンを本当に大切にする。これがBruceとツマ様の引力。

ブルースファームの山小屋でいただく焼き椎茸
ブルースファームの山小屋でいただく焼き椎茸

彼らだからできること

日々目を吊り上げて必死のパッチで仕事して、業績を見てマーケットを見てパソコンをたたく自分たちとBruceご夫妻があまりにも違うので、わたしはいつも「素敵だねぇ」と言うし、夫はいつも「あれはBruceとツマ様だからああなってる」というようなことを言う。「俺たちが同じことを出来ると思うなよ」と言っているのだろうし、それは正しい、わかってる。

他人にできることが自分にだけ出来ないなんてことは絶対にないと息子に教えてきたけれど、その人だから出来ることもある、ってのは教え忘れてたなぁと、あのご夫妻にしかできない農園を見ると、そんなことを思い出す。

彼らと自分たちを比較して卑屈になったりはしないけども、自分がしたいことを通じて自分だから出来ることに到達している、シャンとしたあの背中の、すがすがしさが好きなんだ。

好きだし美味しい、美味しいし好き

Bruceの椎茸は美味しい。

原木栽培で、気の遠くなるような手間隙をかけてたった2人でこだわって育てた椎茸は、本当に美味しい。

肉厚で軸の太いどっしりした品種613の歯ごたえはアワビのようだし、小柄だけど香りが最も上品で、懐かしい椎茸だと感じる309の存在感は大きい。2021年の新顔818はナッツのような香りがして、焼いたときの歯ごたえは613よりもわたし好み。

椎茸の品種を覚える日って来るもんなんだな。

原木を伐って穴を空けて、菌を埋めて蝋でふたをして、浸けて揚げて組んで叩いて崩して浸けて、そのとんでもない工数がやっぱり決定的なのか、それとも溢れ出づる椎茸愛がそうさせるのかもしれないけれど、Bruceの椎茸(通称ブルしい)は美味しい。

それでも、ただ美味しいだけだったら(それが十分に偉大なことであるというのは大前提として)、我が家はきっとここまで椎茸を食べなかったであろうとも確信している。

毎度椎茸を買っているようで、大好きなBruceとツマ様とのつながりを喜び、ご縁を寿ぐに近いような気持ちで椎茸をいただいているのは、紛れもない事実だから。

大定番、しいたけの春巻き。
大定番、しいたけの春巻き

Bruce椎茸(通称ブルしい)の面白み

食べるものは他にもあるのに、何故そんなに椎茸ばかり食べているのだと言われれば、美味しさと生産者以外の面白みが収穫の不安定さにある。

ああ恋しいとまとめてお願いしたくても、それなりに気候にも左右されるブルースファームの手作りハウスは、椎茸の発生待機中(椎茸の気分による)であることも多い。なんせ人気の商品なので、発生待ちに行列ができていることも。

こんなふうに言うと、Bruceとツマ様はさわやかに「力不足で」という主旨のことを、ただこれもニコニコしながら言うかもしれないけれど、わたしたちは「それでいい」と思っている。

待つ待つ、待ってる、大丈夫。欲しいときに欲しいだけ手に入るもののほうが多いから、そうでないものが面白くて愛おしい。注文をしてから発生、収穫と到着を待っている時間も美味しいと、心からそう思う。

ちびしいたけの肉詰め弁当
ちびしいの肉詰め弁当

息子の朝の支度以外のすべてのものがスピーディーに進むし、ほぼ確実な納期のイメージが沸く。たいていのことが間違いなく進む錯覚を起こしそうな、そんな世界に生きてるからこそ、椎茸のペースを待って、慕っているご夫妻の農園の、そのテンポに任せて。

そんな、思うままにはいかない、面白みのごちそう。

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ポケットマルシェhttps://poke-m.com/producers/11953
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